序文
緒台湾における日本研究の現在と未来 徐興慶
本書は、「台日相互理解の思索と実践に向けて」という問題意識を取り上げ、そして「台湾における日本研究の現在と未来」という重要な課題をめぐって、日本・中国・韓国・香港及び台湾の第一線で活躍する日本研究の経験者から最も切実な論考を集め、(一)、日本学研究への提言と構想、(二)、日本学研究への新視角、(三)、日本学研究への歴史的視座、(四)、日本研究への実践的課題などを構想したものである。
台湾の日本研究の歩みを振り返ってみると、1950年代から六十数年に亘り、様々な形で進展したかのように見えるが、最も重要視される「制度化がない」などの諸問題を抱えている1。今日、国際化・学際化が重視される中、台湾における日本研究は、何故必要なのか、如何に発展するべきか、どのような方向へ歩むべきか、などの問いは、依然として、その方向性やシステム作りに対する理解は欠けている側面があるように見える。
そのため、台湾大学は内外から十五名の専門家を集め、「台日相互理解の思索と実践」と題する日本研究フォーラムを行った。(2010.12.2-3)フォーラムは(一)日本学:人文と社会科学の対話、(二)文学、文化、思想、宗教分野の日本学研究の二つのセクションで組織され、次のように、それぞれの国の日本研究の現状と経験から示唆を与えた。
編輯後記
太田登
本書は、2010年12月2日から3日の両日にわたって開催された、「日本研究論壇―台日相互理解的思索與実践」(日本研究フォーラム―日台相互理解の思索と実践)での講演、討論の内容を論文集にしたものである。
いまから三年まえのことであるが、まるで昨日のことのように当日のフォーラムの熱気と興奮が私の記憶の底に鮮明に残っている。というのも、台湾における日本研究は、ながい歴史を積み重ねてきたが、いまようやくその日本研究がより学問的な意味において体系化されようとしている現実をいわば同時代的体験として味わえたからであろう。
本書の構成や収録された論文の意義については、徐興慶教授の「緒」に語られているとおりであるが、本書が「国際日本学研究」への一里塚として寄与できれば、編者としては望外の喜びである。
最後に、貴重なご論考を寄稿いただいた方々、フォーラムの企画運営に協力していただいだスタッフ、そしてご支援いただいた関係各位に心から厚くお礼を申し上げたい。